中小企業1社につき1人のマーケターが伴走支援することをあたりまえに。

「運用の月額って、いくらまで出してもらえるものなんでしょうか」
保守を月1万円で受けている制作者の方から、いちばん多く聞かれる質問です。
このとき、多くの方はメニューの中身を厚くしようとします。月次レポートを足す、SNSの更新を入れる、被リンクの調査を加える。項目を増やせば、それだけ金額を上げられるはずだという考え方です。
気持ちとしては自然なのですが、実際に月10万円を超える契約が決まるかどうかは、メニューの厚さではほとんど決まりません。
決めているのは、相手の会社がいまどの段階にいるかです。紙とFAXで仕事が回っている会社に月15万円の運用支援を出しても、その金額が高いのか安いのかを判断する材料が相手にありません。
逆に、すでにツールを入れて数字を見ようとしている会社であれば、まったく同じ提案書が通ります。同じ資料でも、渡す相手によって結果が変わります。
この違いを見ないまま提案を持っていくと、
「うちにはまだ早いかな」
「もう少し様子を見てから、また相談します」
と言われて終わります。しかも断られた理由が金額なのか、時期なのか、中身なのかが分からないまま次に進むことになります。理由が分からないので改善もできず、次の提案も同じ結果になります。
だからといって、相手さえ選べば自動的に決まるという話でもありません。条件が合う会社に対しても、聞く順番と、出す資料の形があります。順番を間違えると、条件のそろった相手でも値段の交渉になって終わります。
この記事では、
を、実際に提案する順番どおりに解説します。
これまで200人以上の制作者を支援してきた経験と、公的統計をもとに、2026年9月時点で分かっていることをまとめます。
この金額を出せるかどうかは、会社の規模ではなく状態で決まります。従業員10名でも毎月15万円を出す会社があり、100名いても月3万円で止まる会社があります。規模で見ているうちは、この差が読めません。
見るべき条件は3つです。3つそろっていれば提案してよく、2つなら金額ではなく範囲を下げ、1つ以下なら今回は提案しません。
| 条件 | 見分け方 | 欠けているとき |
|---|---|---|
| 判断する人が出てくる | 打合せに社長か決裁者が同席する | 担当者どまり。金額が通らない |
| 数字を見る習慣がある | GA4かGBPの数字を誰かが見ている | 成果を説明しても伝わらない |
| 集客に予算がついている | 広告か求人に月10万円以上使っている | 運用支援だけ突出して高く見える |

1つ目の条件は、打合せの席に判断する人がいるかどうかです。
担当者の方が熱心に聞いてくれて、感触もよかったのに、後日「社内で検討したのですが今回は見送りに」と連絡が来る。よくある展開です。これは提案の中身の問題ではなく、こちらの説明を社内で再現できる人がいなかったという問題です。運用支援は形のない商品なので、伝言では伝わりません。
判断する人が出てこないときは、金額を下げるより先に、その人が出てくる場を作ります。「30分でいいので、社長さんにも同席いただけませんか」と頼むだけで結果が変わることが多くあります。断られたなら、その会社は今回は見送ります。
2つ目は、社内の誰かが数字を見ているかどうかです。
運用支援の価値は、最終的には数字で説明することになります。問い合わせが何件増えたか、検索からの流入がどう変わったか。ところが、もともと数字を見る習慣がない会社では、この説明が「よく分からない話」として処理されます。増えたと言われても、増えていないと言われても、受け取り方が変わらないからです。
見ているかどうかは、GA4のアカウントが生きているか、Googleビジネスプロフィールの管理画面に誰かがログインしているかで判断できます。「入れてはあるが、誰も開いていない」なら、習慣はまだありません。この場合は、運用支援そのものより先に、数字を見る場を月1回作るところから提案します。
3つ目がいちばん誤解されます。手元にお金がある会社ほど出してくれる、という見方です。実際はそうではありません。
判断されているのは、いま出している別の支払いと比べて、こちらのほうが効くかどうかです。求人広告に月20万円を払っている会社なら、その一部を運用に振り替えるという判断ができます。比べる相手があるからです。一方、集客に何も払っていない会社は、比較の対象がないので「高い」としか言いようがありません。
だから初回で見るのは、相手の預金残高ではなく、すでに何にいくら払っているかです。ここが読めていれば、提案する金額の上限もおおよそ決まります。
3つのうち2つしかそろっていないとき、値引きで通そうとしないでください。値引きで入った契約は、翌年もその金額のままになります。一度下げた金額を上げるほうが、最初から適正額で入るよりはるかに難しくなります。
下げるのは金額ではなく範囲です。月15万円の提案を、月8万円で「レポートと打合せだけ」に絞ります。実務代行を外し、判断に同席する部分だけを残す形です。数字を見る習慣がついてから、実務を足していきます。
「この会社に運用支援を出せるか」を感覚で判断せずに済む方法があります。中小企業白書がデジタル化の状態を4段階に分けているので、目の前の会社をそこに当てはめます。
2026年版中小企業白書は、中小企業のデジタル化の取組段階を次の割合で示しています。
| 段階 | 状態 | 割合 |
|---|---|---|
| 段階4 | ビジネスモデルの変革 | 2.8% |
| 段階3 | 業務効率化・データ分析 | 24.5% |
| 段階2 | デジタルツールへ移行中 | 57.3% |
| 段階1 | 紙や口頭が中心 | 15.4% |
出典は2026年版 中小企業白書・小規模企業白書の概要(p.43)です。原典は帝国データバンク「令和7年度中小企業の経営課題と事業活動に関する調査」で、回答したのは12,215社です。
月10〜15万円が通るのは、段階2の後半から段階3にかけての会社です。
段階2は、白書の定義では「アナログな状況からデジタルツールを利用した業務環境に移行している状態」を指します。現場の言葉に直すと、ツールは入れたけれど、数字を見て次を決めるところまでは行けていない状態です。これが全体の57.3%と、4段階のなかでいちばん多い層になります。
この層は、自力で段階3へ上がれずに止まっていることがほとんどです。ツールを入れる判断まではできたのに、そこから先を回す人が社内にいません。だから外から手を入れる余地が大きく、運用支援がそのまま噛み合います。
段階3(24.5%)は、すでに数字を見ているので話が早い反面、比較されます。他社の提案と並べられる前提で提案書を作ることになります。段階1(15.4%)は、運用支援より先に整えるものがあるので、いきなり月10万円の話にはなりません。段階4は2.8%しかなく、社内に専任がいるため競合するのが別の会社になります。
段階2で止まっている会社を訪ねると、ほぼ例外なく同じ話を聞きます。誰が担当なのかが決まっていない、というものです。
サイトの更新は総務の方が片手間でやっていて、その方が忙しくなると止まる。Googleビジネスプロフィールは開設したものの、投稿は開設時の数本で終わっている。GA4は制作会社が入れてくれたが、開いたことがない。どれもやる気の問題ではなく、片手間でやる範囲を超えているだけです。
ここを責めないでください。責める代わりに、片手間でやる範囲を超えている事実を言葉にして返すと、話が進みます。「この量を社内で回すのは無理があると思います」と伝えると、多くの経営者はその場で同意します。
初回の前に、次の3つを見ておきます。どれも数分で確認できます。
まず、GA4かGTMが入っているか。ページのソースを開けば分かります。入っていれば段階2以上です。次に、Googleビジネスプロフィールに写真と投稿があるか。更新が途中で止まっていれば、入れたけれど回っていない段階2にあたります。最後に、お知らせが直近3か月で更新されているか。止まっているなら、社内に手が空いている人がいません。
3つとも「入っているが止まっている」なら、段階2の後半です。この記事で扱う提案が、いちばん通りやすい状態にあたります。
初回で予算を聞かないでください。先に金額の話を出すと、そのあとの会話がすべて値段の交渉になります。
聞くのは次の5つです。数も順番も変えません。
| # | 聞くこと | 何が分かるか |
|---|---|---|
| 1 | 問い合わせは月に何件ですか | 数字を見ているか |
| 2 | その数字は誰が見ていますか | 社内の体制 |
| 3 | 去年サイトで何をしましたか | 止まっている理由 |
| 4 | いま集客で何にお金を使っていますか | 振り替えられる予算 |
| 5 | 半年後どうなっていたいですか | 決裁者の関心 |

「問い合わせは月に何件ですか」と聞いて即答できる会社は、段階3です。数字が社内で共有されている状態なので、提案の前提が変わります。
「たぶん数件くらいだと思います」と答える会社が段階2で、いちばん多い層にあたります。この答え方をした時点で、数字は見ていないけれど関心はある、と分かります。「見たことがないです」なら段階1なので、運用支援の前に、まず計測を入れる話から始めます。
どの答えでも、その場で数字を責めないでください。知らないこと自体は問題ではなく、知る仕組みが社内にないだけです。責めた瞬間に、相手はこちらを採点する人だと受け取ります。
2問目の「その数字は誰が見ていますか」は、体制を確かめる質問です。名前が出てくれば担当がいます。「特に決まっていません」なら、更新が止まる理由がそこにあります。
3問目の「去年サイトで何をしましたか」は、答えにくい質問です。何もしていない会社が多いからです。ここで沈黙が生まれても、こちらから埋めないでください。沈黙のあとに出てくる「そう言われると、ほとんど何も」という一言が、いちばん大事な情報になります。何もできていない自覚があるからこそ、提案を聞く理由が生まれます。
すでに払っている金額が、そのまま提案できる上限の目安になります。求人広告に月20万円を使っている会社になら、月10〜15万円は現実的な数字として受け取られます。何も払っていない会社に同じ金額を出せば、桁が違う話に聞こえます。
ここで「ご予算はいくらくらいですか」と聞かないのは、相手が答えを持っていないからです。運用支援を買ったことがない会社に、相場は分かりません。聞けば「安いほうがいい」としか返ってこないので、こちらが根拠を出すほうが早くなります。
保守費用そのものをどう計算するかは、Web制作の保守費用はいくら請求すべき?にまとめました。
「半年後どうなっていたいですか」の答えは、そのまま提案書の1ページ目に書きます。相手が言った言葉のまま書くのが要点です。
「問い合わせを増やしたい」と言われたなら、そう書きます。こちらで「認知拡大」や「ブランディング」に言い換えないでください。言い換えた瞬間に、相手にとっては自分の話ではなくなります。
メニューを並べただけの提案書では、月10万円は通りません。通る提案書には、金額の根拠になる4項目が必ず入っています。

「月15時間まで」と書きます。作業項目ではなく時間で約束すると、依頼が増えたときに線を引けるようになります。
時間で書くと安く見えるのではないか、と心配される方がいますが、実際は逆です。上限が書かれていない提案書は、相手からは青天井の請求書に見えます。何をどこまで頼めるのかが分からないものに、月10万円の決裁は下りません。書いてあるほうが通ります。
書き方は「月15時間まで。超えた分は事前にご相談のうえ、時間単価1万円で追加」の一文で足ります。追加の単価まで書いておくと、超えたときの会話が交渉ではなく事務連絡になります。
やることより先に、やらないことを書きます。提案書のなかで、いちばん効く1ページです。
やらないことを書くと消極的に見えないか、という質問をよく受けます。実際には逆の印象になります。線を引ける人は、引いた内側については責任を持つ人だと受け取られるからです。何でもやりますと書いてある提案書のほうが、かえって信用されません。
レポートの実物を1枚見せます。中身は空欄で構いません。毎月これが届くという絵が見えると、月額という支払い方の意味が伝わります。
見せる項目は3つに絞ります。問い合わせの数、検索からの流入、今月やったことです。項目を増やすほど、見せられたほうは何を見ればいいのか分からなくなります。
そしてカタカナを日本語に直しておいてください。「セッション」ではなく「サイトに来た回数」、「コンバージョン」ではなく「お問い合わせ」と書きます。決裁者がその場で読めるかどうかで、伝わり方がまったく変わります。
「合わなければ3か月で見直します」と書きます。始めるときに終わり方が書いてあると、判断のハードルが下がります。
囲い込もうとするより、抜けやすくしたほうが決まります。相手にとって、月額契約でいちばん怖いのは金額そのものではなく、合わなかったときに抜けられないことだからです。実際に3か月で切られる契約は、条件を満たしている相手であればほとんどありません。
メニューを何で組むか、価格をどう3階建てにするかは、運用支援と保守の違いとは?で扱っています。
同じ運用支援でも、提案とレポートが中心なら月5〜8万円、実務代行が入ると月10〜15万円になります(自社の契約・指導実績にもとづく目安/2026年6月時点)。
この差は作業量の差というより、相手にとっての意味の差です。提案とレポートだけの契約は、社内に動かす人がいる前提で成り立ちます。動かす人がいない会社にとっては、提案書が増えるだけになってしまいます。
10〜15万円の帯を狙うとき、実務をすべて引き受けようとしないでください。引き受けるほど稼働が読めなくなり、金額は上がっても時間単価は下がります。
入れるのは、止まると全体が止まるものだけです。優先順位をつけて、上から順に契約に入れていきます。
SNSの毎日投稿を最初に入れてしまうと、稼働の大半がそこに取られます。しかも成果が見えるまでに時間がかかるので、稼働は重いのに報告することがない、という月が続きます。契約が切れるときは、たいていこの形になっています。
初月から全部入れると、こちらの負荷と相手の期待値が同時に上がります。最初の3か月はレポートと打合せを回して型を作り、動くことが分かってから実務を足すほうが、結果として金額は上がります。
3か月やると、相手の社内で止まっている場所がはっきりします。そこを名指しで引き受ける形で追加を提案すると、値段の交渉になりません。困っている場所を埋める話になるからです。
制作売上への依存をどの順番で下げていくかは、制作売上への依存はどう下げる?に整理しました。
最初の30日で決まります。ここで何もしないまま1か月が過ぎると、2か月目に「何をしてもらっているのか分からない」と言われます。
GA4とサーチコンソールとGoogleビジネスプロフィールの管理権限を受け取り、数字が取れているかを自分で確認します。制作会社が入れたはずのGA4が、実は途中から計測できていなかった、ということが珍しくありません。
取れていない期間があるなら、その事実も先に伝えます。あとから発覚すると、こちらの落ち度に見えます。最初に伝えれば、それは引き継いだ状態の説明になります。
いまの数字を1枚にまとめて渡します。良い数字である必要はありません。最初に出すのは改善案ではなく、現在地です。
改善案から入りたくなりますが、現在地を共有していない相手に改善案を出しても、良し悪しを判断できません。まず同じ画面を見るところから始めます。この1枚が、翌月以降の報告の型にもなります。
初回の報告は、成果ではなく作業で構いません。何が動いたかが見えることが先です。数字の話に切り替わるのは、3か月目あたりからで十分です。
30日以内に一度も報告しない契約は、半年以内にほぼ切れます。成果が出ないからではなく、何が起きているか分からない状態が続くからです。報告は成果の証明ではなく、契約が動いていることの証明として出します。
金額と期間の目安は、いずれも自社の契約・指導実績にもとづくもので、市場の相場を示すものではありません(2026年6月時点)。統計は2026年版中小企業白書が出典です。
今日やることは1つだけです。担当しているサイトを3つ開いて、GA4が入っているか、Googleビジネスプロフィールの投稿が止まっていないかを見てください。両方が「入っているが止まっている」会社が、最初の提案先になります。
同じ契約の値上げとしては通りません。保守は残したまま、別メニューとして運用支援を出す形にします。保守は壊れないようにする契約、運用支援は数字を動かす契約で、買う理由がそもそも違います。
新規で探すより、すでに制作を納品した先を見直すほうが早いです。納品から1年以上たっていて、お知らせが止まっている会社が候補になります。関係ができているぶん、初回MTGの席も作りやすくなります。
値切りの材料にはなりにくいです。時間を書かないと、比較対象が他社の見積になります。時間を書くと、比較対象が社内で1人雇う場合に変わります。月15時間で10万円なら、採用より安いという読み方をしてもらえます。
1ページで足りることが多いです。ページ数より、カタカナを日本語に直してあるかのほうが効きます。セッションより「サイトに来た回数」と書くほうが、決裁者にはそのまま伝わります。
条件の3つがそろっている相手なら、ほとんど切られません。切られる場合は、30日以内に一度も報告を出していないケースが大半です。
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栃本常善(とちもと つねよし)
株式会社マーケティング・エッセンシャルズ 代表取締役/Webマーケティングコンサルタント
中小企業1社につき1人のWebマーケターが伴走支援する状態をつくることを目標にしています。Webサイトの運用支援と、制作者が運用支援者へ移行するための講座を運営しています。
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